自分用メモ
かなり参考になった一冊なので、
何度も読み進め、理解を深めたい。
その上で、このページもどんどん追記する。
この本の基本情報
★どんな人におススメか
・マーケターとしてある程度実務経験を積んできた方
・マスマーケティング領域についての知見はある一方、
「たった一人を深掘りする」という点に慣れていない方
※マーケティングに興味がある、これから勉強していきたいという方は、
もっと簡単な本を読んだ方がいいと思います。
★補足:著者が設定したペルソナについて
・1997年にPGでブランドマネージャー3年目を迎えた29歳の著者自身
・20代で学んできたマーケティング理論と量的データ分析を徹底的に追求して戦略を構築し、
市場導入した日本初の新ブランドが、わずか半年で鳴かず飛ばずとなり、
それまでに経験したことがない大きな挫折を感じていた
★構成
序章:顧客起点マーケティングの全体像
1章:マーケティングの「アイデア」とN1の意味
2章:顧客ピラミッドで基本的なマーケティング戦略を構築する
3章:9セグマップ分析で販売促進とブランディングを両立する
4章:スマートニュースのN1分析とアイデア創出
5章:デジタル時代の顧客分析の重要性
※参考:顧客起点マーケティング要約。N1分析とアイデアの重要性
自分のレビュー
目の前の一人を大切にするマーケティング
顧客(N1)を起点にして、どのようにマーケティング施策を行うべきかが、著者の25年以上の実務経験を踏まえたノウハウや、現職のスマートニュースにおける施策の事例を交え、非常に詳しく書かれています。
ある程度マーケティングの経験がありつつ、より自分自身の理論、考え方に深みを持たせたい方や、マスマーケティングの世界にどっぷり浸かってきたものの、一人の顧客を起点にどのようにマーケティング戦略を組んでいけばいいか分からない、といった方には非常におススメの一冊。著者自身もあとがきで「1997年にP&Gでブランドマネージャー3年目を迎えた29歳の著者自身」をペルソナにして執筆したと述べています。
2019年6月現在、マーケティング関連の著作の中ではベストセラーにもなっており、未読の方は一度目を通して欲しい一冊です。
世の中大勢ではなく、自分の目の前にいる人、顧客を幸せにするにはどうすればいいかが分かる本だと、読んでみて感じました。
時間がなければ125ページから10ページ程を立ち読みして見て欲しいです。
「これはじっくり読むべき本」と思えるはず。
参考になったレビュー
著者自身の実証的経験に基づいたシンプルで実践的なマーケティング方法論
著者の西口氏はP&Gからはじまり、ロート製薬、ロクシタン、スマートニュースなどの企業で実践的に成功してきたマーケターであり、著者自身の失敗も含む体験からこの本が書かれているが、決して「P&Gや外資のノウハウ」だったり、自身のケーススタディを自伝的につづったものでもない。著者自身が編集者とともに執筆に非常に時間をかけて、本3冊分にもおよぶ量をじっくりと1冊にまとめあげ、他者にもわかりやすくその方法論を一般化させたものである。意図的には同じくP&G出身の森岡毅氏の『確率思考の戦略論』と似ているが、森岡氏が数式をメインにやや専門的な意味合いが強いのに対して、西口氏の本は計量的な部分も含んではいるものの誰にも応用可能なものになっている。
西口氏の問題意識は、マーケティングがデジタルvsマスのような手法だけの議論に終始し、組織的な壁もあいまって、経営と明確につながる筈のマーケティングの意義が不透明かつ不毛になっている現状に対する批判から始まっている。だからこそマーケティングの意義が他部門や経営にもわかりやすく可視化されなければならない。西口氏の「顧客起点」とは、単なるマーケティングのターゲット消費者のことを指すのではなく、ビジネスを生み出す上での源泉であることを改めて気づかせてくれる。したがって本書の5セグの顧客ピラミッドとは、たった3つの質問(知っているか?、買ったもしくは使ったことあるか?その頻度は?)をもとに、自社が対象とするビジネスの構成要素をシンプルに地図として示したものなのだ。そして9セグマップは顧客ピラミッドをブランディング=プリファレンス(次買いたいか?)で切った図であり、各セグメントのマーケティング課題(販促+ブランディング)を分析しやすい形にしている。
そしてマーケティングのソリューションの方法も徹底的に実践的で、セグメントの実際のひとりの顧客N=1から出発するため、さきほどのの3つの質問で切り出した人に聞いたうえで、それを乗り越える「アイデア」を見つければよい、というシンプルなものである。本書のスマートニュースの事例は、著者自身がまわりの人に聞いた経験そのものが紹介されており、単なる調査会社の提言ではない。
西口氏の著書に見られる知見は、森岡氏と同様にバイロン・シャープ氏の『ブランディングの科学』と被る部分があるが、3者に共通しているのは実際のマーケティングの経験的なデータをもとに語っているという点である。ただの抽象的なフレームや解釈ではなく、実際に起こっている現実に対して本質的に見極めようとする意志がそこにはある。バズワードや手法に惑わされず、顧客に問い続ける姿勢こそが今のマーケティングに求められている。
著者の「全勝」の秘訣
かなりマーケの「プロ」向けの本です。内容は素晴らしく、かなり広い業界で使える考え方で(特に後半の「9つのセグメンテーション」)、どこを狙うべきか、その投資効果も含めて考えることができますし、今やっている施策のレビューにも使えます。何より、著者がこの考え方をロート製薬、ロクシタン、スマートニュースで実践して、「全勝」なのが説得力あります。
マーケ初心者には難しい内容かもですが、ある程度マーケをやっている皆さんには、かなりお勧めです。
マーケティングディレクターは現場も見る
一見するとスマホ時代の申し子のように見える著者だが、この著書によれば初代iPhone上陸以降にIT業界とネット広告を使ったマーケティングに関心を持つようになったとみられる。
スマホニュースの執行役員としてIT業界入りしたのは2017年、iPhoneでは7から8に相当し、スマホがすっかり普及し、AI囲碁”DeepMind”が人間の世界チャンピオンを打ち負かした頃である。それまでの著者とIT業界とのつながりは不明である。
その著者によるマーケティング戦略の本が本書である。著者の提唱するN1分析とその基本となるパレート分析、イノベーション理論から実践的な顧客分析やブランディング、著者自身の事例まで順を追って解説してあり、よくまとまった1冊になっている。
本書で紹介されている事例のうち、9セグマップや顧客プラミッドに即して解説してあるのは「スマートニュース」であり、タレント起用を含めたCM戦略まで述べていることから著者自身の自負とこだわりが伺える。化粧品等の実物商品の事例は文章のみで短くまとめられているがこちらからも生々しい実体験を読み取ることができ、大いに参考になる。
しかし最終章のデジタル化による新リアルワールドの話になると飛躍気味になる。若年層=スマホ世代、スマホを通じて世界を把握、老年層=スマホは単なる電話代わり、新聞にテレビのオールドメディアに執着、などとステロタイプで捉えすぎているきらいがある。この点においてはスマホアプリ会社の最高幹部としての見解であると留意して読み進める必要がある。
またあとがきにある通り、どんな立派なマーケティング理論と分析だろうと机上で練った戦略の成功率は低い。したがってこの本を一読したあとはいったんこの本の理論は忘れて虚心坦懐な一消費者として、身近な実店舗に出向き、同業他社の商品を購入して使用し、使い心地などの体験を書き留めるとよい。そのあとでこの本に立ち戻って戦略を練れば成功率が格段に上がるだろう。
なお想定される読者層としては著者と同様、ある程度の規模の会社のブランドマネージャー、事業責任者、エリアマネージャーだが、内装から品揃えまで店舗運営全体の裁量を持つオーナー店長、社長にも実践可能な内容とみられる。
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